ラブレター

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買うきっかけづくりをするのが、広告の主な役割。このためには、制作者は、生活者の気持ちに寄り添い、分かってあげる必要がある。「広告は、ラブレター」と言われるゆえんだ。

 

 著名なクリエイターのデイヴィッド・ドラガの広告制作の姿勢に、人への思いが集約されている。

(引用ADWEEK 7/12 2017):

「人を気にかける」このことこそ、あなたを真剣にさせ、

一心不乱に仕事に向かわせる力になる。

人はあなたが何を気にかけるべきかなど教えてくれない。

しかし、一旦それを見つけたら、あなたはそのために学び、懸命になる。

私の人生で全てをかけたことは、「人を気にかける」ことだった。

 

「ラブレター」の書き方をドラガが示してくれた。他方、広告は売り上げを約束する「ビジネスレター」という厳しい事実もある。しかも、YouTubeで「オムレツの作り方」を見る前に「生命保険」や「消臭剤」の5秒CMを見させられる苦痛は、広告への嫌悪感を日々植え付けている。”請求書付きのラブレター”なんて誰も見たがらない。なんとか振り向かせるクリエイティブな工夫が必要になる。

 

 ”打算のラブレター”ではなく「広告と気づかれないように広告するのが、効果的である」とナチス広報官のゲッペルスが言っている。ネット時代には、パラサイトされたことを気づかせない「スティルスマーケティング」もある。

 

 しかし、広告と気づかれないようにする努力とか、消極的で姑息なことを考えなくて済むようにするには、広告を楽しんでもらえるようにすればいい。それには、冒頭から見入ってしまう「魅惑型」が、効果的。ディオールとかシャネルとか、ヨーロッパのブランド広告に多いタイプです。ペリエのCM"the drop"を見たい。

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「魅惑型」には、エンターテイメント性に富んだ「娯楽」も含まれる。マウンティン・デューの映画「シャイニング」のパロディが好例:Bryan Cranston the Shining MTN Dew

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そして、「共感型」も見入らせる効果もある。東京ガスのCM"おばあちゃんの料理”

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最後に、見逃せない「説得型」。バイラル効果を生み出す本道と言うべきか。女性基礎化粧品のダブのCM。96%の女性は、自分を美人と思っていないという調査結果に基づき、17年間も続いている好評のキャンペーン。共感を獲得し、開始8年間で、売上25億ドルから40億ドルにアップした。自分でも気づいていない自己の美しさに気づいてもらいたい、磨いてもらいたいという説得型 ダブCM"リアルビューティ スケッチ”FBIの捜索人物肖像画家が実証している。

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 ドラガの「人を気にかける」本流の先に、3つの支流「魅惑型」「共感型」「説得型」。しかし、テレビCMではなく、時間制限のないネット展開のコンテンツとして見た方がいいだろう。人を気にかけず説得失敗のテレビCMの氾濫を傍観している日常は体感済みだ。