草原のビョーク

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240万年前に人類が発祥したとされるエチオピアのオモ川流域の部族は、自然を擬態することで、美しさを競い合っている。北欧の歌手ビョークのビデオ顔負けのオシャレだ。

 

この「草原のヒョウ」を思わせる異端のファッションは、みんなを楽しませて、村で評判になる。これと同様のものが、ネット社会にも生まれている。噂を喚起するウエブ上のエンターテイメントで、ネット用語では、ブランディド・コンテンツ(ブランド力を高めるソフト)と呼ばれているもの。

 

このブランディッド・コンテンツの最高峰、レジェンドと言われているのが、2001年にデビューしたBMWフィルムの”ハイヤー(Hire)”。10分ほどの作品1本に破格の4、5億円の製作費を惜しげもなく投入した。リドリー/トニー・スコットウォン・カーウェイガイ・リッチージョン・フランケンハイマーなど一流の監督が、8本の短編ムービーを撮り下ろした。主演のクリーブ・オーエンが、ハイヤーの運転手を演じ、全編BMWが疾走するカーチェイスが凄い。

 

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紹介フィルムは、「宝石を盗られないために、飲み込んで運んでいる」と言う宝石商を街へ運ぶハイヤーが、途中窃盗団の車に襲撃されるが、追跡を振り切って街に着く。しかし、謎は残る。この他、マドンナ主演作もあり、bmwfilm検索で、YouTubeでかろうじてご覧いただけます。

 

ウエブサイト放映4ヶ月で1,100万回視聴を獲得して充分なバイラル効果を発揮した。また、4年後に1億回視聴を獲得。売上は、前年に比べ(僅かとも言えるが)12%アップの成果。キャンペーン開始3年後に、BMWの経営幹部が代わり、巨大キャンペーンの検証が行われた。総額30億円の投資に対する見返りROIが悪い、あるいはウエブサイト登録視聴者は、BMWの購買層とは全く異なる人々であることが判明し、圧倒的なクオリティにも関わらず、シリーズ終了が決定された。

 絶滅したはずの孤高のウエブ・ムービーは、”草原のビョーク”のように、20年経っても

デジタル村でひっそり生きている。