こう見えても不幸せです

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1度ならず、2度までも、空港で小銭がなくて新聞を買い損ねそうになった忙しい男がいた。

 

その時「持っていっていいよ。読みたいいんだろう」と新聞を手渡してくれた新聞スタンドの男がいた。しかも、2度目も、1年前と同じ男だった。

 

忙しい男は、新聞を感謝して受け取り、空港ゲートへ急いだ。

 

それから10年ほど経って、成功した忙しい男は、親切にしてくれた新聞スタンドの男のことをふと思い出し、会って礼を言いたくなった。1ヶ月半ほどかけてその男を探し当てた。

 

「私が誰であるかもうご存知だと思うが、失礼でなければ、その時のお礼がしたい。頑張って働いた私だから、あなたが希望されるものをなんでも差し上げることができると思う」と忙しい男が申し出た。

 

しかし、「あり余るお金をもった今のあなたの善意は、貧乏なあの時の私の好意には、到底かなわない」と言って男はオファーを断った。

 

後日、「私よりリッチな人がいる」と、ビル・ゲイツ本人が語った逸話である(2019年11月)。

 

美談として語られているが、新聞スタンドの男の視点で捉えて見たい。本当に感謝していたのなら、出張明けの数日後にでも、わざわざ空港の私のところに払いに来ていただろう。きっと大した金額ではないと、軽く見ていたに違いない。しかし、(ニュースの多寡に応じて販売量の予測を立てて買取る)私にとっては、まさに身銭を切っていた。今やお金持ちのあなたが急に思いついて、何万倍にしてでも返してやるというのは欺瞞だ。自分のプライドを賭けて、彼は拒否したと想像する。

 

成功を重ね、贖罪のように慈善活動をしていたが、自分勝手な傲慢さがゲイツの中で、増殖されていったのかも知れない。「一緒に成長できないと思った」とっくに破局していた関係をゲイツは美化したが、離婚原因は、彼の傲慢さにあったのではないか。職場結婚したゲイツの妻と新聞スタンドの男は、軽視されプライドを傷つけられ、擦過傷のヒリヒリした痛みをずっと感じていた同士かも知れない。

 

反省は必ず後からやってくるCM

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