非日常が日常になっている

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楽しいことを諦めることを強いられたコロナ禍、旅行へ行けない憂さ晴らしなのか、日本のエルメスの入荷を待つ朝の行列に驚く。あるいは、PCゲーム企業の好決算、ネットショッピングの好況、UberEatsが街を走り回る、力をゆっくり奪うステイホーム疲れと戦っている。

 

アメリカでは、対前年比218%のネイルケア商品、165%のボディケア商品、117%のヘアカラー商品など、普及率85%のリモートワークでの気分転換の身づくろいに余念がない。また、数十年も売行きに変化がない”香るキャンドル”が、117%もアップし、家庭のキャンドル・ディナーが増えた様子がうかがえて、微笑ましい。

 

これからのポスト・コロナのアメリカでは、「大転職時代」になると予想されている。リモートワークを通じて、会社より家庭にいる時間が多くなり、ワークライフ・バランスを考えても不思議はない。

 

日本でもポスト・コロナの転職機会があっても、アメリカほどではないだろう。日本の平均年齢は、48.2歳(2020年)で、アメリカの平均年齢38.2歳より、10歳以上高齢化し、大多数の転職適齢期は、とっくに過ぎている。

 

一方、1年近くのリモートワークは、オフィス形態を大きく変えようとしている。少なくとも35.5%のリモートワーク採用企業(2020年PRTIMES調べ)では、ワークプレイス改革がすでに進行している。個人の決まった席はなく、チームのオープンスペースが生まれ、仕事の可視化、オープンキッチンとして、協働(コラボスペース)になっていく。

 

リモートワークでは、情報交換はあるが、感情交換はない。それだけに、協調性よりも多様性、発想力や提案力の個人能力が問われている。近い将来、オンライン社員は戦略プランナーになり、オフライン社員は戦術スタッフになり、労働偏差が生まれると想像する。

 

ワクチン接種やリモートワークの普及が、ゲームチェンジャーになる。ニューノーマル”と呼ばれていた”異常”が、終わろうとしている。コマーシャルもコロナ禍に別れを告げようとしているようだ。

 

コカコーラのCMは、詩を通して語る”悪い記憶から学ぶなら、悪いエネルギーからソーシャル・ディスタンスをとろう。OPEN LIKE NEVER BEFORE(今まで以上に心を開いて、もう一度新しいスタートを!)”:

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ペプシのCMは、ようやくコロナ以前のあの懐かしい”異常”に戻れる!1cmも進歩していない、変わらない人々が素敵なTHE MESS WE MISS:

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 外出を控えている人にとって口臭を抑えるガムは不要。ガムの売上が31%ダウンし、ミントは36%ダウンした。そこで、”コロナから解放された歓喜”をどうしても表現したかった。外へ出るならガム!EXTRA GUMのCM:

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もし、100年後の社会学者が、3本のCMを見たらどう反応し、分析をするだろう。「コカコーラという黒い炭酸飲料のコマーシャルが、何故人生を語っているのか、生きることがそんなに難しい時代なのか?」とコメントしているだろう。ペプシに至っては「なんと不衛生な人々なんだろう。これじゃあ、疫病が流行したのも無理はない」。ソーシャル・ディスタンスというマナーを知らない未来人にとって、外出した人々が何故こんなに友好的なのか、不自然で理解不能だろう。最後のカットについては「同性の缶飲料の回し飲みについての一考察」という論文が出されるだろう。あるいは、部屋に閉じ込められていた人々が、ある日突然解放される。何故か人々はエクストラ・ガムを噛んで外へ出る。抑制と辛抱と不安のコロナを体験していなければ分からない歓喜のCM。

 

様々なコロナ体験知の仮説を受け止めながら、私たちは、ポストコロナの新しい価値観を見出し、分析するだろう。非日常を日常にした人は、どれだけ成長しただろうか。