プロ野球のドラフト会議のあらましをテレビで観た。
野球少年を育てた母親や父親や家族との秘話が紹介された。
離島の水上タクシーの運転手のお父さんが、揺れる小舟の上で投球させ、息子の体幹を鍛えた。大家族の兄たちが弟のために希望の道を捨て、弟を支えた。長距離ドライバーのシングル・ファーザーは男メシで息子を育てた。
興味をひきそうなエピソードを、テレビ局が探しだしたせいか、凄すぎた。うちわの話であり、テレビで公開されるものでもなかったように思った。
球速150キロくらいで、少年の戦績はほとんど触れられず、ひたすら家族の絆を描いた。
全編、愛が熱い。胸苦しいくらい強い。
少年の能力が足りないぶん、愛が必死に追いかけているように思えた。
ひたむきな愛は、少年を育て、勇気づけ、前へ進める。反面、プレッシャーにもなる。
そして、家族愛に応えられた少年と、応えられなかった少年に分かれる。
少年たちは口を揃えて「親へ恩返しがしたい」と言った。
ボールじゃなくて、愛をキャッチボールしているようだった。
だから、指名されない結果には、やるせなさを感じる。
残念な結果をどう受け止めているかを、がっかりした家族に聞くのは、ひどすぎると思った。
「さらに、来年の指名を目指して」と司会は言うが、来年がほぼ来ないのは、誰もが知っている。
ボックスティシューが、広告主なのかと思うくらい、これでもかと涙腺を刺激した。
厳しいプロの壁に、愛がかなわなかった。
楽しいはずのスポーツが、厳しく、悲しく映った。
澄み切った青空の下、時速159Kmの速球をガツンと打ち返して、外野手が見上げる方向に打球が消える。観客席が、どよめく。野球は、ヒーローを讃えるエンターテイメントだ。
涙を見せたら負けだ。白い歯の笑顔が、次のファインプレイを生む。
そして、良いことの連鎖反応で、親孝行もできる夢の到達点だ。
そんなプロスポーツのたくましさからはほど遠い姿が、テレビ画面にあった。
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