ふきげんな天才たち

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Wieden+Kennedy

"one for all. all for one.(すべての人のための一人。一人のためのすべての人)"このアメリ海兵隊のスローガンが嫌いだ。

 

全体主義の臭いがする。組織のトップに近い人が、お酒に酔った勢いでよく言う。組織の求心力を強めるための方便だと思う。

 

反対に、一人の力なんてたかが知れている。だから、チームの突破力が、必要だと言う人が大勢いる。一個の天才を生かせない組織の意見はそうだろう。

 

チームプレイより、個人プレイをうまく柔軟に活かす企業体があってもいい。そんな気持ちで、アメリカを見てみた。

 

成功を収めているチームプレイ派の広告会社の一例に、サーチ&サーチがある。彼らは、プレゼン100ヵ条を持っている。その一つに「プレゼン中の主語は”私”でなく、”我々”を使う」というのがある。

 

成功を収めている個人プレイを尊重する広告会社に、ワイデン&ケネディがある。マーケティングをいっさい拒否するワイデン氏も特異な存在だが、社員も彼に負けない個性的な天才エリートが集まっている。

 

天才たちは、プライドが高い。プレゼンの最中、仲間のプレに対して首を横に振って、”僕はそうは思わない”と平気で無言の意思表示、あるいは承認欲求をむき出しにする。

 

「彼らは、確かに良い提案をするが、彼らの個人プレイを心よく思わない」クライアントの苦言が、競合他社に伝わっているそうだ(ジョン・スティールの著作にも記されている)。

 

天才たちのプライドが高いぶん、要求も高い。英国ホンダが、彼らに仕事を依頼したら「日本のクライアントは、この広告で売れるのかと必ず聞いてくる。この質問をするなら仕事はしない」と返事があった。

 

英国ホンダにとって、この我慢の選択は、実を結んでいる。多くの賞を獲得し、ブランド力のなかった英国で好感を醸成した。

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あえて、アコードなど、見慣れた多数の有名なカンヌ受賞CMを割愛して、もう1点:

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ホンダ以外でも、天才ぶりを発揮している。バターをこんなに美味しい料理素材として見せていた:

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チームプレイ遵守もいいけど、胸のすくような個人プレイも心地いい。個人にアクセスするネット時代、多数決の広告だけではなく、少数決の広告がもっとあるべきだと思う。