目の前には、壊れたドアがある。半分閉じた扉から出入りするようなきゅうくつさを、この2年、私たちはつねに感じていた。
マスクをつけた人の表情は見えない。初めて会った人は、ほぼ覚えられない。人と人の距離をとっていて、近い関係は生まれない。2022年もグーグルは、半数がリモート就業するシフトをとっている。フェイスブックのザッカーバーグは、近未来のアバターのオフィスを想定している。コロナは、人と人をどんどん遠ざけている。
2020年から2021年は、未来のタイムマシンで、帰りたくない年になるだろう。
”タイムマシン”といえば、ペプシのコマーシャルを思い出す。
1886年に誕生したコカコーラが、100周年キャンペーンを行う前年の1985年に放映された。100年前の1985年を目指して、男がタイムマシンに乗り込む。その手にはペプシが握られていた。1年後の1986年に誕生するはずのコカコーラを消滅させるストーリが愉快だ:
しかし、”タイムマシン”篇の前、1983年からペプシのコークへの挑戦が始まっていた。
ペプシは、コークより糖分が高いため、最初の一口は、コークよりおいしく感じるモニターが多かった。この調査結果を生かしたのが”ペプシ・テイスト・テスト”篇。挑戦広告を世にデビューさせた:
これらを製作したのが、ペプシコ社長のジョン・スカリーだった。のちに「黒い砂糖水を売るより、世界を変えることを手伝ってほしい」とスティーブ・ジョブズに誘われ、アップルの経営陣に加わった。そして皮肉にも、スカリーがジョブズをアップルから追い出す人になった。
その後アップルに返り咲くまでの10年間は、ジョブズにとって帰りたくない年だったかも知れない。