少年たちの友情を描いた”スタンドバイミー”という映画があった。このような体験をした大人たちはたくさんいると思う。私もそのひとりだ。
「怪しい男が悪いことをしたら交番に知らせよう」と、少年探偵団をつくって、街の怪しい男をつけたこともあった。しかし、さあこれから悪いことをするぞというそぶりをあからさまに見せる男がいるわけもなく(怪しげな男が、信用金庫に普通に入って行くのを見て、終わった)。
かっこいいクルマを見つけては話し合った。後の部分が木でできた細長いクルマ(後日、モーリスのステーションワゴンだとわかった)に興奮していた。しかし、いつかこんなクルマに乗りたいと思う向上心もなく、ひたすらほめていた。物欲も所有欲もなく、路上を走るひとつの形状を賛美するだけで、満足していた。
関西の小学生にとって、リュックを背負って行く京都は、立派な冒険旅行だった。お腹がすいて、「ここはきっと美味しそうだ」と、食事処に入ろうとしたら、「あんたら、ぶぶ漬けでもどうどす」とお店から出てきた中居さんに拒絶された。小学生のプライドを傷つけられて「ぶぶ漬け、食べる」と言ったら、友達が飛び上がって止めに入った。何をおそれているのか、よくわからなかった。
いたずら心と好奇心、それだけで毎日が動いていたような気がする。
京都大学の先生と友人が「たこ焼きは、どこまで大きくできるか」という論文を書いたそうだ。結論ではなく、子供のような好奇心を失わない大人がいることに興味を覚えた。
一方、楽しくて効果的な広告は、小学生のいたずら心と好奇心でできているように思える。バイラルとか難しいことを考えず、子供の視点でつくればいいと、多くの制作者が気づいている。
プロの制作者ではなく、素人発想の方が効果的だと考えたのが、コーンチップスのDoritos。ユーチューバーに広告を企画させることを考えた。担当の広告会社BBDOからは猛反対されたが、押し切った。結果は好評、2006年以来、いたずら心旺盛な企画が続いている:
巨大たこ焼きへの好奇心の答えです:
”好奇心は、猫を殺す”というイギリスのことわざがありますが、好奇心もほどほどにしないと、広告制作者になってしまうかも。
と言うより、今年を期待させるブランド広告がたくさんデビューする「箱根駅伝」を観ていても、好奇心やいたずら心のかけらも見られなかったのは残念だった。