指だけがおぼえていた
小説「雪国」の主人公がしばらくぶりに会った芸妓に、「指だけがおぼえていたよ」と挨拶するくだりがある。
「繊細な指の記憶」は、脳の記憶より強く、いつまでも残っている。川端康成の気づきが印象的だった。
触覚は、指先のみならず全身をおおっている。人間は、”感受性の塊”とも言える。この触覚(haptic)を通じて、デジタルの擬似体験を、よりリアルに感じさせる試みがある。
PARTYのクリエイティブ・ディレクターの川村真司が、触っている感覚と気持ちをシンクロさせる”擬似触覚”、スード・ハプティック(psiudo-haptic)を、安室奈美恵の「Golden Touch」のミュージックビデオで試みた。再生回数1,400万超を記録して、世界中で反響を得た。
(ビデオ画像の真ん中の小さなマークに人差指を置いてご覧ください(赤いゼリーの絵では指を2,3回叩くと、ゼリーが気持ち良く揺れます))
バーチャルをリアルに近づけようとする試みは、人の触覚にアプローチして”心の扉”を開こうとしている。川村真司は、「VRゴーグルに”擬似触覚”を取り込むことで、新しい展開が生まれる」可能性を指摘。
タカラトミーが、育成玩具で「ふれあえる次世代 お世話トイ=ぷるにんず」で、”擬似触覚”の実用化をして2022年度上半期のヒット商品になっている(日経MJヒット商品番付)。
ぷるにんずCM(最初に時間設定し、卵から触られることでキャラクターが育成):
一方、デジタル映像の”擬似触覚”では、どんなにリアルに感じても、腕に止まった蚊の方がリアルだ。
腕に止まった蚊のカユミを”擬似触覚”させるのが、デジタル・クリエイターの次の仕事かも知れない。
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アナログ・クリエイターは、10年ほど前からテレビ画面で、もぞもぞするカユミを擬似体験させるおバカな試みを2、3しています(画面の赤いスキットル・チョコに人差指をずーとくっつけてください)
"この指にキスしたら、指が王子様になるの?→そうよ、二人でskittle王国を治めるのよ、、→なんか、変な感じ” (上記同様)
もともと、高尚な”擬似触覚”など、skittleは考えていません。今は普通のコマーシャルに戻っています: