2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

指だけがおぼえていた

小説「雪国」の主人公がしばらくぶりに会った芸妓に、「指だけがおぼえていたよ」と挨拶するくだりがある。 「繊細な指の記憶」は、脳の記憶より強く、いつまでも残っている。川端康成の気づきが印象的だった。 触覚は、指先のみならず全身をおおっている。…

頭はスポンジ、ペンはアンテナ

once upon a time in Hollywood 好きと嫌いが、あいなかばする人がいる。 好きでもない嫌いでもない、普通そういう人は、気にもならなくて記憶から消える。それでも、少し気になる人が、監督、脚本家、俳優、プロデューサーをこなすクエンティン・タランティ…

人は人をどれだけ愛せるか

The Shining すさまじいピラニアのように、しつこいヘビのように、完成度を突きつめていく。完璧主義者のスタンリー・キューブリックの撮影現場の空気だろう。 しかし、完璧主義者についていけない人間が現れると、そこで船は沈む。キューブリックにとって幸…

マディソン郡の橋の彼が好きだった

gran trino ハリウッド俳優のクリント・イーストウッドは、演技が上手いのか、下手なのか分からない。 クリントの当たり役は、”ダーティ・ハリー”。複雑な心理戦はない。ひたすら容疑者を追い詰め、法廷に立たせることなく、マグナム銃をぶっ放す(無法者はど…